--- 七度文庫 （なのたびぶんこ） 女流作家編 ---

（１）

　親戚の姪の結婚式の招待状がきた。
場所は広尾の高級ホテルだ。
みっともない格好もできないのでいろいろ迷ったが新しいワンピースを用意した。
新郎は職場の同僚らしくて会社の社員らしい男女が大勢来ていた。
親戚の中には柚希が小説家になったのを知らない人もいて「柚希ちゃんが小説書くなんていったいどうなっちゃってるの」と驚いていた。
親戚は皆お酒に強い人ばかりで柚希もお酒を勧められて飲みすぎてしまった。
結婚式の後。二次会に誘われて近くの飲み屋に行った所までは覚えているがそのあとの記憶がない。
アパートに帰って寝ていると夢を見る。
見知らぬ男にナンパされてラブホテルに連れ込まれる夢だ。
太った中年男が柚希の身体の上にのしかかって腰を上下に使いながら激しく柚希を責めたててくる。
繰り返す絶頂はいつまでも続いた。
しばらくして夢から醒めると体中が汗で濡れている。
柚希は指先でオＸＸコを触ってみたが、まるでお漏らしでもしたように濡れている。
柚希は我慢できなくて指を使って自分の身体を慰め始めた。
さっきの夢を思い出しながら、指をオＸＸコに入れると身体の震えが止まらない。
急にバスルームのドアが開く音がして柚希ははっとした。
顔を確かめてみると中年の男で、昨日二次会で一緒だった男の子ではない。
柚希は男が誰なのか思い出そうとしてみたが、どう見ても全然知らない顔だ。
変だと思って部屋の中を見回すと自分の部屋ではない。
「すみません、あなた誰なんですか、此処はどこなんですか」と柚希は男に聞いてみた。
「なんだ覚えてないのか、昨夜は凄かったぜ」と男に言われて柚希はびっくりしてしまった。
どうやら昨夜この男とエッチな事をしたらしいと気がついて柚希は寒気がした。
「昨日何があったのか教えてもらえますか」と柚希は男を問い詰めた。
「一緒にカラオケをしたあと、タクシーでこの部屋まで送ってやったんだぜ」と男が答えた。
そういえば昨夜誰かとカラオケをしたような気がするが、相手が誰だったのか覚えていない。
柚希は女子大生がナンパされてお酒を飲まされて男のアパートに連れ込まれる小説を書いたことがあるがまさか自分が同じ目に遭うなんて夢にも思わなかった。
もしかして自分が女流作家だってことを男に知られたのかもしれないと思ったがうっかりしたことは言えないと思った。
「それでこのアパートで何があったんですか」と柚希は男に恐る恐る聞いてみた。
「きまってるじゃないか、たっぷり可愛がってやったんだぜ」と男に言われて柚希はそれ以上の事を聞く勇気は無かった。
柚希は男の素性を確かめた方がいいと思って「女の扱いに慣れていらっしゃるんですね」と言ってみた。
男は財布から金を出して、一万円札を数え始めた。
「月々のお手当ては１０万の約束だったよな。今月分の１０万を払うぜ」
「週に一回、金曜日に泊まりにくるという約束だ、よく覚えておけ」と男が言い出したので柚希はびっくりしてしまった。
柚希は男とそんな約束をした覚えは全然ない。
「なにか勘違いしてませんか、誰か他の人でしょう。私そんな約束してません」と柚希は男に言い返した。
「なんだ覚えてないのか、自分から言いだしたくせ、よくそんな事が言えるな」と男は怒った口調でどなり返してきた。
「私昨日あなたと何があったんですか」と柚希は男から事情を聞き出そうとした。
「覚えてないならこれを見るんだな」と言いながら男が携帯を取り出すと、画面に柚希の顔が映った。
眉を歪めて苦しそうな顔をして口が半開きになった顔は男に責められている時の顔だとすぐ分かった。
柚希は急に昨夜の出来事が身体に蘇ってきた。
柚希は女子大生やＯＬが遊び慣れた男にナンパされて男狂いの体にされる小説を書いたことがあるがまさか自分が同じ目に遭わされるなんて夢にも思ってみなかった。
週に一度遊び慣れた男に可愛がってもらえるなんてこんな上手い話はない。
男と遊んだ体験を小説にすればネタに困ることもない。
「これからは毎週金曜日にあなたに可愛がってもらえるんですか」と柚希は男に確かめてみた。
「いやなら止めてもいいんだぜ。月に１０万欲しい女は他にもいらくでもいるからな」と男は冷たい口調で言い返した。
遊び慣れた男なら相手の女に困ることはないはず。
男の言ってることが嘘ではないと柚希はすぐに分かった。
「いやだなんて言ってません、お願い私を可愛がって下さい」と柚希は男におねだりをした。
「お前が本気で俺にほれてるなら、付き合ってやってもいいんだぜ」と言って男が柚希の気持を確かめようとした。
柚希は嘘でもいいから大げさに言った方がいいと思って「私あなたが大好きなんです、本当です。こんな気持ち私初めてです」と精一杯の甘い声で答えた。
「お前は可愛い女だぜ。正直で素直でそれでいて身体は淫乱だ」と男は満足そうに柚希を褒めた。
「ありがとうございます。あなたもとっても男らしくて最高に素敵です」と柚希も男を褒め返した。
柚希の子宮は男に乱暴に扱われるのを待ち望んでいるように熱くなった。
浜辺におしよせる波のように、欲望は繰り返し柚希の体に押し寄せては退いていった。
支配者の欲望に従順に従うことだけが、柚希に許された最後の希望だった。
柚希の体は空高く放り上げられたまま、落ちることを許されずに回り続けた。
意志を失った人形の体を女の宿命が支配し続けた。
暴君が究極の至福の時を告げるのを待つしかもう望みはなくなった。
暗闇のなかで震えが止まらなくなった柚希の身体は、男の最後の一撃を受けて打ち砕かれた。

（完）

--- Copy Right 七度 柚希 （なのたび ゆき） 2024/12/27 Ver 1.03 ---