午後、静寂を切り裂くように玄関のベルがけたたましく鳴り響いた。裕子が恐る恐るドアを開けると、そこには見覚えのある四人の男たちが立っていた。借金取りの男たちだ。彼らの顔には怒りが滲み、鋭い眼光がまるで刃物のように裕子を射抜いた。リーダー格の男が一歩踏み出し、彼女の肩を乱暴に掴んで押し返すと、他の三人もその後に続き、強引にリビングへと雪崩れ込んできた。ドアがバタンと閉まる音が響き、男たちは一斉に裕子を取り囲んだ。「お前、風俗のバイトやめたらしいな！ 何考えてんだよ！」 リーダー格の男が太い腕を振り上げ、彼女の顔のすぐ横の壁を拳で叩きながら怒鳴り散らした。壁に小さなひびが入るほどの力だった。裕子はその衝撃に体を縮こまらせ、言葉を失ってただ立ち尽くすしかなかった。
一人が彼女の手にある封筒に目を留め、口の端を歪めて薄笑いを浮かべた。「ビデオディスク、見ただろ？ あれを郵便受けに入れたのは俺たちだよ」。彼は封筒を指で弾き、わざとらしく彼女の胸元に視線を落としながら続けた。「あのお前の恥ずかしい姿、ちゃんと楽しんだか？」 その言葉に、裕子の胸は締め付けられるように疼き、心臓が早鐘を打った。別の男が一歩近づき、彼女の顎を指で無理やり持ち上げて顔を覗き込むと、低い声で畳み掛けた。「お前が風俗で働いてたおかげで、俺たちは店から毎月高額な紹介料をもらってたんだ。それがなくなった今、どう落とし前つけるつもりだ？」 彼の指は顎を離れ、ゆっくりと彼女の首筋をなぞり、意図的に力を込めて軽く締め上げた。裕子は息を詰まらせ、恐怖で体が硬直した。
リーダー格の男がさらに詰め寄り、彼女の耳元に顔を寄せて熱い息を吹きかけながら何度も繰り返した。「どうするんだよ、言ってみろ。言えよ」。彼の手は裕子の腕を掴み、力任せに引っ張ってソファの方へ引きずった。彼女がよろめくのを見計らい、もう一人が背後から腰に手を回し、逃げられないようにがっちりと押さえつけた。男たちの意図は明らかだった。裕子を再び支配し、失った利益を彼女の体で補わせようとしているのだ。「お前が店を辞めたせいで、俺たちの儲けが減った。責任取れよ」と、顎を締め上げた男が冷たく言い放ち、彼女の肩を強く押してソファに座らせた。裕子の膝は震え、冷や汗が背中を伝って滴り落ちた。
男たちの怒りは、裕子が予想もしなかった事実を突きつけていた。彼女が風俗店で働いていたのは、単に借金を返すための手段ではなかったのだ。借金取りの男たちにとって、裕子は金銭的な利を生む道具であり、店との裏取引で得られる紹介料の源だった。彼女が辞めたことでその収入が途絶え、彼らはその損失を埋めるために怒りを燃やしていた。
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