一月ほどが過ぎたある朝、久美は自分の身体に異変を感じた。吐き気と微かな倦怠感。妊娠検査薬を手に震えながら確認すると、陽性の印がはっきりと現れた。父親はあの組織のボスに間違いなかった。あの監禁部屋で、彼に繰り返し貫かれ、支配された夜々――その結果が、今、彼女の身体に宿っていた。署を退職し、麻薬捜査官としての過去を捨てた久美は、もはやただの一人の女だった。だが、その事実に彼女は驚くほど冷静だった。むしろ、心のどこかで安堵さえ感じていた。
妊娠を知った瞬間、彼女の身体に再びあの感覚が蘇った。男に屈服した時、鎖の中で彼にすべてを白状し、彼の腕の中で喘いだ時の悦び。あの深い服従の喜びが、熱い波となって彼女を包んだ。かつては自分を責めたこともあった――秘密を漏らし、彼に屈した弱さを。だが、今、彼女はそれを悔やむ気持ちにはなれなかった。彼女は男の所有物であり、彼に支配されることが彼女の運命だったのだと、どこかで受け入れていた。そして、腹に宿る命が、その絆をより確かなものに感じさせた。
久美は自分の気持ちに素直になることを決めた。もう葛藤や不安にさいなまれるのはやめようと。彼のもとへ行くしかない――その思いが、彼女を突き動かした。男の隠れ家は、倉庫の裏にひっそりと佇む小さな建物だった。冷たい風が吹き抜ける夜、久美は震える手で扉を叩いた。足元が震え、心臓が激しく鼓動した。扉が開き、男の巨躯が現れた瞬間、彼女の息が止まった。彼の鋭い瞳が彼女を捉え、懐かしさと驚きが混じった表情が浮かんだ。
「妊娠したの…あなたの子供よ」と、久美は声を震わせて告げた。男は一瞬目を丸くし、次に深い笑みを浮かべた。「そうか…俺の子か」と低く呟き、彼女を強く抱き寄せた。その反応に、久美の胸は熱くなった。男が喜んでくれたこと、彼の腕の中で再び温かさを感じたことで、彼女は女として生まれた幸せを初めて実感した。彼女はもう単なる所有物ではなかった。彼を愛しているのだと、その瞬間に確信した。あの監禁の日々、屈辱と服従の中で味わった悦びは、ただの支配ではなく、愛ゆえのものだったのだ。
男は久美の気持ちを察したように、すぐに彼女に触れた。大きな手が優しく彼女の頬を撫で、首筋を這い、ゆっくりと服を脱がせた。前回よりも時間をかけて、彼は彼女の身体を愛撫した。指先が胸を包み、唇が腹に触れ、彼女の敏感な部分を丁寧に探り当てた。久美の身体は彼の手に応え、熱く震えた。そして彼が挿入してきた時、それは前回以上に深く、情熱的だった。ゆっくりと、しかし確実に彼女を貫き、彼は彼女の反応を確かめるように腰を動かした。久美は喘ぎ、身体を弓なりに反らせ、彼にしがみついた。最高の悦びが彼女を包み、彼女は涙を流しながらその感覚を噛みしめた。
「あぁ…あなた…」と呟く久美の声に、男はさらに深く彼女を抱き、彼女を絶頂へと導いた。行為の後、汗に濡れた身体を彼に預けながら、久美の心は満たされていた。屈辱感を超えた愛。あの監禁の夜々に感じた悦びが、愛ゆえに特別だったことを彼女は悟った。彼女は決意した――これからは男のために生きようと。彼の子を宿し、彼に愛される女として生きることを。安堵と幸福感が彼女を包み、不安は消え去っていた。男の腕の中で、久美は静かに微笑んだ。彼女の心と身体は、もう彼にしか向けられなかった。
男と一緒に暮らし始めた久美は、心から幸せを感じていた。かつては敵として立ち向かった犯罪組織のボスと同棲するという現実に、彼女はなんのためらいも抱かなかった。過去の葛藤や正義感は、男への愛と新しい命を宿した喜びに塗り潰され、もはや遠い記憶でしかなかった。二人が暮らす家は、冷たい監禁部屋とは違い、温かな光に満ち、久美の心を穏やかに満たした。
妊娠が進む中でも、男は久美の身体を求め続けた。ある夜、男は彼女をそっとベッドに横たえ、優しく服を脱がせた。お腹が丸みを帯びた久美の身体を見つめる瞳には、欲望と愛情が混じり合っていた。男は彼女に負担をかけまいと気遣い、体位を工夫した。横に寝かせた久美の背後から、浅い角度でゆっくりと挿入してきたのだ。お腹の子どもに影響を与えないよう、腰の動きは穏やかで、まるで彼女を慈しむように愛撫する手と調和していた。
男の熱が久美の中に入り込むたび、彼女の身体は柔らかく反応した。深い突き上げはないものの、男の優しい律動が彼女を静かに満たしていく。「大丈夫か？」男が耳元で囁き、首筋にキスを落とすと、久美は感謝の気持ちで胸が熱くなった。「ありがとう…あなた…」掠れた声で答えながら、彼女は男の心遣いに涙が滲むほど嬉しかった。挿入のたびに伝わる温もりと愛情が、彼女の心と身体を包み込み、穏やかな悦びとなって広がった。
男の手が彼女の膨らんだお腹を優しく撫で、そのまま胸へと這う。浅い動きの中にも愛が宿り、久美は男の気遣いに感謝しながらその愛を受け入れた。行為が終わり、男が彼女を抱きしめてくれると、久美は幸せに満たされながら目を閉じた。犯罪組織のボスという男の過去も、彼女にとってはもう関係なかった。ただ愛する人と子どものために生きる今が、彼女にとっての全てだった。
久美にとって、大好きな男性と暮らす毎日は、まるで夢のような幸福に満ちていた。朝、目覚めると隣に彼がいる安心感が、彼女の心を静かに温める。男の寝息を聞きながら、そっと彼の逞しい腕に触れると、そこに確かに存在する愛情が指先から全身に伝わってくるようだった。かつての激しい日々や孤独な夜は遠くに霞み、今はただ彼との穏やかな時間が彼女を包み込んでいた。
一緒に朝食を作る時、男が不器用にパンを焼く姿を眺めながら、久美は小さく微笑む。彼が時折見せる無邪気な表情や、彼女を気遣うさりげない仕草が、胸の奥にじんわりと温かな波を広げた。お腹に宿る子どものことを話す時、男が真剣な目で耳を傾け、そっと彼女の手を握ってくれる瞬間は、言葉にできないほどの幸せを運んでくる。犯罪組織のボスという過去を持つ彼だが、久美にとってはただ愛する人でしかなく、そのギャップさえ愛おしかった。
昼下がり、二人でソファに寄り添いながら何気ない会話を交わす時、男の低い声が耳に心地よく響き、彼女の心を穏やかに満たす。窓から差し込む柔らかな陽光が彼の横顔を照らし、その強さと優しさが共存する姿に、久美は何度も見とれた。彼がそっと肩を抱いてくれるだけで、彼女は自分が守られ、愛されていることを実感し、心の底から安堵する。妊娠で重くなった身体を労わる彼の手つきに、深い愛情を感じずにはいられなかった。
夜が訪れ、二人で眠りにつく前、彼の腕の中で過ごす時間が久美にとっては何よりも大切だった。男の体温が彼女を包み、静かな呼吸が寄り添うように聞こえてくる。時折、彼が無意識に彼女のお腹に手を置き、子どもの存在を確かめるように触れるその仕草に、久美は涙が滲むほどの喜びを感じた。この瞬間が永遠に続けばいいと願いながら、彼女は彼の胸に顔を寄せ、幸せを噛みしめる。
大好きな男性と暮らす毎日は、久美にとってこれまで知らなかった平穏と愛の結晶だった。彼の存在が彼女の全てを支え、未来への希望を灯してくれる。かつての捜査官としての自分は遠い影となり、今はただ愛する人のそばで生きる一人の女として、久美は心から満たされていた。お腹の子が生まれる日を二人で待ちわびながら、彼女はこの幸せな日々がずっと続くことを信じていた。
完
7.自分の体が組織のボスの男を熱望するのに気がついた久美は苦悩する<< ページトップ
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