同窓会の喧騒が遠ざかり、有紀は六本木の裏通りに迷い込んでいた。酔いの残る頭に夜風が心地よく、ハイヒールの音が静かな石畳に響く。すると、低く太い声が闇の中から這うように近づいてきた。「ねえ、一人で帰るには勿体ない夜だよ」。振り返ると、そこには見知らぬ男が立っていた。鋭い目つきに危険な色気を漂わせ、唇の端に浮かぶ笑みが有紀の警戒心をくすぐった。彼女が返事をためらう間に、男は強引に腕をつかみ、抵抗を許さない力で引き寄せた。ラブホテルへの道は短く、有紀の心を試すように誘惑が続いた。
部屋に入ると、男は有紀をソファに押し倒し、言葉よりも先に手を伸ばした。彼女の肩に触れた指先は熱く、服の上からでもその意図が伝わってくるようだった。男は有紀のジャケットを剥ぎ取り、ブラウスのボタンを一つ一つ外し始めた。その動きは焦ることなく、むしろ彼女の緊張を楽しむかのようにゆっくりと進んだ。酔いの勢いに押され、有紀は抗えず、服が一枚ずつ剥がされるたび戸惑いが胸を締め付けた。男の体はがっしりと大柄で、シャツ越しに見える筋肉は硬く盛り上がり、旦那の細身で頼りない体とは比べ物にならないほど力強かった。彼の手は彼女の肌を滑り、首筋から鎖骨へと指を這わせ、まるで獲物の感触を確かめる猟師のようだった。
男は有紀の耳元に顔を寄せ、低い声で囁きながら彼女のスカートをたくし上げた。「もっと楽にしていいよ」と言いながら、その手は太ももの内側をなぞり、ストッキングを破くように下ろした。彼女の震える吐息を聞きながら、男は満足げに目を細めた。服を脱がし終えると、彼は自分のシャツを脱ぎ捨て、筋肉が浮き出た胸板を露わにした。その体は有紀を圧倒し、彼女の不安を煽った。男は彼女をベッドに押し倒し、両手で手首を押さえつけて身動きを取れなくした。そして、彼女の唇に強引にキスを仕掛け、舌を絡ませながら有紀の抵抗を溶かしていった。
男が彼女に深く繋がる瞬間を迎えたとき、有紀の胸に不安が渦巻いた。知らない男に身を委ねることへの恐れと、旦那への裏切りの影が心を刺した。だが、男が彼女の中へと滑り込むように入り込んだ瞬間、その不安は熱い悦びに塗り潰された。彼の腰使いは巧みで、旦那の単調で淡白な動きとはまるで別次元だった。最初はゆっくりと、彼女の反応を見ながら浅く揺らし、彼女が息を漏らすたびに少しずつ深く突き上げた。男の手は有紀の腰を掴み、彼女の体を自分のリズムに合わせるように固定した。ある時は優しく揺らし、ある時は力強く打ち付け、彼女の感じるポイントを執拗に探り当てた。
男は有紀の首筋に唇を這わせ、軽く歯を立てて彼女の震えを引き出した。片手で彼女の胸を揉みしだき、もう一方の手で太ももを強く握りながら、彼女の体をじらすように弄んだ。遊び慣れたその仕草は、有紀がこれまで知らなかった快楽の深淵を開いた。彼女の喘ぎが大きくなると、男は目を細めて彼女の表情を観察し、腰の動きをさらに加速させた。リズムを刻むたびにベッドが軋み、有紀の体は宙を舞うような感覚に支配された。男は彼女の限界を見極めるかのように、緩急をつけた動きで彼女を追い詰めた。そして、最後の一撃を放つ瞬間、彼は有紀の腰を強く引き寄せ、全身の力を込めて彼女を貫いた。その衝撃に有紀の体は砕け散り、生まれて初めて味わう愛の悦びに溺れた。歓喜の波が全身を包み、彼女の意識は快楽の渦に飲み込まれた。
ベッドに横たわり、荒い息を整える有紀の心は二つに引き裂かれていた。旦那を裏切った自責の念が冷たく胸を刺し、同時に知ってしまった愛の悦びが甘く彼女を縛り付けていた。男は汗に濡れた体を起こし、有紀の葛藤を見透かしたように薄く笑った。彼にとって、これは一夜の遊びであり、彼女を翻弄する術を熟知したゲームだったのかもしれない。だが有紀には、取り返しのつかない一歩だった。快楽の余韻に浸りながらも、彼女の心は疼き続けていた――罪悪感と幸福感の間で揺れ動き、答えの見えない夜が静かに更けていく。
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