家に戻り、旦那との生活を続けていても、有紀の心にはもう旦那への愛情の欠片も残っていなかった。毎朝のコーヒーも、夜の淡白な会話も、彼女には虚しく響くだけだった。あの夜の熱が、心の奥で疼き続けていた。数日後の昼下がり、突然鳴った電話に有紀の手が震えた。見知らぬ番号。あの男の声が、低く響いた。「また会いたい。今夜、ラブホテルで待ってるよ」。その言葉は、彼女の理性を揺らし、欲望を呼び覚ました。
心は二つに引き裂かれた。「もう二度と会ってはいけない」と戒める思いと、「またあの熱に溺れたい」という衝動が激しくぶつかり合った。頭では危険だと分かっていた。だが、体が、魂が、あの男を求めていた。葛藤の末、有紀は鏡の前で身支度を始めた。男が喜ぶ姿を想像し、レースの縁取りが愛らしい下着を選び、若い頃に愛用したミニのワンピースを引っ張り出した。電車に揺られながら、期待と緊張で足が震え、心臓が喉元までせり上がった。窓に映る自分の姿に、もう戻れない道を歩んでいることを感じていた。
ホテルの部屋に入ると、男は前回と同じように有紀をソファに座らせた。だが、その手つきは微妙に違っていた。彼は彼女の膝に手を置き、ワンピースの裾をゆっくりとたくし上げた。指先が太ももを軽く撫で、ストッキングの上から熱を伝えた。彼女の目を見つめながら、男はワンピースのファスナーを下ろし、肩から布地を滑らせた。服が一枚ずつ剥がされるたび、彼女の息が乱れた。男は焦らすように、彼女の敏感な部分には決して触れず、首筋に唇を近づけては離し、耳元で「可愛いね」と囁いた。その声は甘く、彼女の心を縛った。彼はストッキングを破くように下ろし、素肌に指を這わせたが、核心には触れず、彼女の反応を楽しむようにじらした。
有紀の体が熱くなり、堪えきれなくなった。彼女は震える声で「お願い…もっと」と呟き、男の胸に手を伸ばした。男の目に満足げな光が宿り、彼は彼女の下着に手を掛けた。レースの縁を指でなぞり、ゆっくりと下ろすと、彼女の白い肌が露わになった。男は膝をつき、彼女の太ももに唇を押し当て、内側を軽く舐め上げた。舌先が肌を滑り、彼女の震えを引き出した。彼は両手で彼女の腰を掴み、ソファに深く押し付けるように固定し、首筋から鎖骨へと舌を這わせた。軽く歯を立て、赤い痕を残しながら、彼女の胸に手を伸ばした。指先で柔らかく円を描き、頂点を摘まれて有紀が声を上げると、男は目を細めてその表情を味わった。「自分で求めるなんて、いい子だね」と低く笑い、彼女の羞恥心を煽った。
男は彼女をベッドに押し倒し、両手首を頭上で押さえつけた。彼女の唇に深くキスを仕掛け、舌を絡ませて息を奪った。シャツを脱ぎ捨てた彼の筋肉質な体が有紀を圧倒し、その熱が彼女を包んだ。男が彼女に深く繋がる瞬間を迎えたとき、有紀の胸は期待で膨らみ、息が詰まった。彼はすぐには動かず、彼女の中に入ったままじっと見つめ、彼女の瞳が潤むのを待った。そして、ゆっくりと腰を揺らし始めた。最初は浅く、彼女の内側をなぞるように動き、次第に深く突き上げた。彼女の反応を見ながら、彼は片手で彼女の太ももを強く握り、もう一方の手で首筋を撫でた。ある時は優しく揺らし、ある時は力強く打ち付け、彼女の感じるリズムを意図的に崩した。
男は時間をかけて彼女を楽しんだ。彼女の喘ぎが大きくなると、彼は腰を止めて唇を耳元に寄せ、「まだ終わらせないよ」と囁いた。再び動き始めると、今度は彼女の腰を両手で持ち上げ、自分の動きに完全に合わせるように操った。ベッドが軋むたび、有紀の体は宙を舞う感覚に支配された。男は彼女の胸に舌を這わせ、汗に濡れた肌を味わいながら、彼女を高ぶらせた。彼女が限界を迎える瞬間を計算するかのように、彼は緩急をつけて彼女を翻弄した。そして、最後の一撃を放つ時、男は彼女の腰を強く引き寄せ、全身の力を込めて彼女を貫いた。その衝撃に有紀の体は震え、悦びの波が押し寄せ、涙が溢れて止まらなかった。
有紀の心はもう、旦那を裏切った罪悪感よりも、男に可愛がられたい欲望に支配されていた。自分でもその事実を否定できなかった。快楽の余韻の中、彼女は自分を責めた。「私って、つくづく淫乱な女なんだ」。その自嘲は、どこか解放感に満ちていた。男は汗に濡れた体を起こし、有紀の涙を見下ろして薄く笑った。彼にとって、これは彼女を自分の虜にするための遊びであり、彼女の心と体を掌握する術を熟知した一夜だったのかもしれない。電車で帰る道すがら、彼女の心は疼き続けていた――罪悪感と悦びの間で揺れながらも、男の熱を求める自分が確かにそこにいた。
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