その日以来、真由美の心は以前の平穏を失っていた。セーラー服を着て外を歩くたび、男性の視線が彼女の体に突き刺さるように感じられた。特に年上の男たち――駅のホームで新聞を読むサラリーマン、コンビニの前で煙草を吸う中年男、道端で立ち話をしている作業員たちの目が、彼女の肌を這うような嫌らしさに満ちている気がしてならなかった。あの夜、四人の男たちが彼女を押さえつけ、欲望のままに体を汚した記憶が、すべての男性の視線に重なった。彼らがみな同じように、彼女を押し倒し、挿入したいと望んでいるのではないか――そんな疑念が、真由美の心に黒い影を落とした。学校の男性教師さえも例外ではなかった。かつては尊敬と信頼を寄せていた先生の視線が、今では彼女の胸や腰を値踏みするように感じられ、教壇に立つ姿を見るたび、体がこわばり、胃が締め付けられるような恐怖に襲われた。誰一人信用できなくなり、彼女の周囲は見えない敵に囲まれているように思えた。
昼間、学校での時間もまた苦痛だった。授業中、黒板を見つめながらノートを取っていると、突然あの感覚がフラッシュバックする。男たちに押さえつけられ、次々と挿入される感触が、体の奥から這い上がってくるのだ。硬く熱いものが彼女を貫き、力強く動き続ける記憶が、教室の静寂の中でリアルに蘇った。友達と笑いながら廊下を歩いている時でさえ、ふとした瞬間に体の芯が熱くなり、あの夜の愛液が溢れた感覚が太ももに甦る。心の中では「忘れたい、消えてしまえ」と叫んでいるのに、体はまるでそれを懐かしむように震えた。友達が「真由美、顔赤いよ？ 大丈夫？」と心配そうに声をかけても、彼女は「ちょっと疲れてるだけ」と嘘をつくしかなかった。その笑顔の裏で、心は恐怖と羞恥に押し潰されそうだった。日常の何気ない瞬間が、あの夜の記憶に侵されるたび、真由美は自分を取り戻す術を見失った。
夜、一人で布団に潜り込むと、その苦しみはさらに増幅した。暗闇の中で目を閉じると、男たちに奥まで深く挿入された感触が鮮やかに甦り、まるで今その場にいるかのように体が反応する。一人ひとりの動きが脳裏に浮かんだ――最初に彼女を乱暴に貫いた彼、その後にじっくりと味わうように腰を動かした男、そして疲れを知らずに何度も繰り返した他の二人。汗と吐息が彼女の肌に絡みつき、布団に染み込んだ汚れの感触までがリアルに感じられた。目を閉じても眠れず、体が疼いて仕方ない。心では「こんな記憶、二度と味わいたくない」と強く拒絶するのに、体の奥底から湧き上がる熱は「あの快感をもう一度」と囁く。その相反する衝動が、真由美の心を真っ二つに引き裂いた。あの夜、確かに体が悦びを感じたことは否定できない事実だった。だが、その快楽は彼女を汚し、壊したものでしかない。嫌悪と欲望が混じり合い、どちらが本当の自分なのか分からない混乱に、彼女は毎夜涙を噛み殺した。
誰にも相談できないことが、真由美をさらに孤立させた。友達に打ち明ければ、驚きと軽蔑の目で見られるだろう。親に話せば、泣きながら彼女を責めるか、あるいは過剰に心配して自由を奪うかもしれない。学校のカウンセラーにさえ、真実を話す勇気はなかった。「あんな目に遭ったのは私が悪いからだ」と、自分を責める気持ちが心の底に沈殿し、誰かに助けを求める資格すらないと感じていた。昼間は笑顔を装い、友達と他愛ない話で時間をやり過ごし、夜は一人で記憶に苛まれる日々が続いた。自分の体が汚れてしまったこと、そしてそれでも快楽を覚えてしまった自分への嫌悪感が、真由美を毎日苦しめた。渋谷のセンター街を避けるだけでは、この傷は癒えない。あの夜の男たちに奪われた何かを取り戻す方法を、彼女はまだ見つけられずにいた。心の奥で叫ぶ「助けて」という声は、誰にも届かず、ただ虚しく響くだけだった。
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